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スーパー行ってもチョコレートの山ですね。
今年はチョコレート味のカレーでもつくりましょうかね。

以下は沖神のバレンタインssです。
一昨年のバレンタインになんか期間限定で上げた気がしますので、見たことある人はすみません。

3-Zというか学パロ。



放課後。
まだざわつきの抜けない廊下を帰路に着く二人は無言のまま歩いていた。取り巻く空気がなんとなくピンクがかっている錯覚に神楽は嫌悪を感じた。女の子達の黄色い声。なんとも煩わしい。いや、煩わしいのはそれだけじゃないはずだ。

「その紙袋」

立ち止まって、神楽が隣を歩く総悟を軽く睨んだ。怪訝に彼は振り返る。
いつも荷物は軽いほうがいいとか言って宿題に必要な辞書までも教室においてくるような男が、今日は重たそうな大きな紙袋を下げている。その中身は言わずと知れた。

「がさがさうっさい」

先ほどから神楽の神経を刺激してならないのがこの音。彼が歩くたびに、足にあたるのかかすれる音がやけに耳に付いた。

「仕方ねぇだろィ。鞄に入りきらねぇんだから」
「じゃあもらわなきゃいいだろ。だいたい彼女の目の前で他の女の子から手渡しでチョコ受け取る男なんて聞いたことないネ」

教室を出てからもう三人もの女子が、声をかけては総悟の足を止めた。隣の神楽なんてまるで眼中に入っていないのか、白い頬を真っ赤に染め上げて、上目遣いで総悟を見やる。そして毎年恒例。手作りチョコレートだかなんだか知らないが、それを彼も受け取るものだから、神楽からしてみればおもしろいわけがない。

「妬くんじゃねぇよ。お前だってこの前俺の目の前で知らねぇ男からポケットティッシュもらってただろィ」
「あれはただ商売で配ってるだけだろ。お前のとはわけが違うヨ」
「いや、一緒だろ。もらえるものはもらっとけって」

これ以上何を言っても埒が明かない。神楽は心底嫌そうな顔をしてため息をついてやった。教室を出る前に口に放り込んだ飴玉が、舌の上でころっと転がった。お前にはおこぼれだって分けてやらねぇよ。そんなことを言って彼は歩みを進める。その後姿を神楽はじっと眺めた。
さらっと揺れる金色の髪。確かにルックスは悪くない。整っているということは認めてやる。けれど性格なんて問題外だ。優しいわけでもないし、一緒にいて面白いわけでもないし。それどころか、人を甚振るのが趣味などとぬかすとんでもないエテ公だ。
しかし、それでも世間一般の女子がこのとんでもないエテ公の毒牙に触れること自体、多少なりとも気に食わなく思っている自分もまたイかれた女なのであろうけれども。

(こんなやつ、どこがいいんだろう)

ため息と共に何気なく浮かんだ疑問だったが、すぐに神楽は打ち消した。その疑問はまずバレンタインを楽しんでいる女子達よりも先に神楽に降り注ぐ。
こいつのどこがよくて自分は恋人という役をしているのだろう。そもそも恋人らしいことなんて二人の間には一切なく、カップルと称される甘い空気ですらもどこか遠い。毎年この日が来るたびに不安になる。だからだろうか。去年まではあげたチョコレートも今年はバレンタインが特別行事に思えなくて、用意しなかった。
そのことについても総悟はただ、チョコレートなんて他から嫌ってほどもらうから別にいらないと返しただけだった。

「おい」

不意に何かを思い出したように総悟の足が止まって神楽を振り返った。廊下にはまだ何人かのカップルが、他愛ない会話を繰り返しているようだった。早く来いと促されているのかと思って、神楽は総悟の元までかける。
すると彼は何を思ったのか、軽く両手を広げて首を竦めてみせた。

「私の何処にチョコレートがあるか、探し当ててみて」

一体何の話だ。

「は?」

もらったチョコレートに何か悪いものでも入っていたのだろうか。本気でそう思うほど突拍子もない総悟を神楽は見上げた。

「この間テレビでやってたんでィ、バレンタインの特番で。女がそう聞いて男がチョコを探すっつーゲームみたいなやつ」
「それ深夜番組アルか」
「よくわかったな」

真剣に総悟が目を丸くする。
わかるに決まっている。そんなアダルトビデオみたいなゲームを誰がゴールデンタイムに放送するか。

「お前もちょっとやってみろよ、それ」

何を思ったのか平然と彼がそんなことを言ってのけた。

「は?」

本当に意味がわからない。

「手こう。目閉じて」

それでも総悟は話を進める。紙袋を鞄で塞がった両手を広げた。思わずつられて神楽もそれに習った。

「こうアルか」
「そして、"私の何処にチョコレートがあるか…"、」
「私チョコ持ってないヨ」
「いいから言えって」

総悟が眉を寄せる。なんなんだ、いきなり。神楽がむっと唇を尖らせた。わかったよ、もうなんだってやってやる。
軽く両手を広げて神楽が目を閉ざした。

「私の何処にチョコレートがあるか、探し当ててみ…、」

言葉は不自然に途切れた。思いもよらなかった感触に思わず神楽は目を開ける。飴を転がしていた口に総悟の唇が触れた。それは一瞬の出来事。熱が神楽の口を塞いだ。口蓋を支配していた甘い物体は、ひょいっと彼の舌に絡み取られる。

「なんでィ。チョコじゃねぇのか」

今まで神楽が舐めていた飴を舌の上で転がしながら総悟は悪戯に笑った。温もりがまだ名残を残す唇を押さえて、神楽は真っ赤な顔で彼を睨みつける。

「信じられないアル」
「チョコじゃねぇならいらねぇや。返すか」

知っててわざとした癖に。いつだって自分は彼から逃れられない。翻弄されてばかりの毎日。さっきまでいちゃついていた数組のカップルも、あまりに大胆な総悟の行動に驚いてこちらをじっと見たままだった。
でも、もう関係ない。
神楽が腕を総悟の首に絡めた。背伸びして身長差を埋める。そうして飴玉を奪われた彼の口に己の唇を重ねた。総悟は華奢な神楽の腰を抱いた。その拍子に手から紙袋が落ちたが気にならなかった。

温もりの中、交わされたのは飴玉ではなく深い口付け。

END.

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