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発掘物を再UP。
ナルサクってよりナル→サク→サス。
二部に入ってすぐに書いたやつでした。


デートに誘うのはいつも俺からだったから。

「ねぇ、花火しよ」

突拍子であったとは言えども、彼女からの誘いはやっぱり嬉しかった。


切り拓く



騒がしかった昼間がまるで嘘であったかのように、催しものが開かれていた広場はがらんと静まり返っていた。あたりに人の気配なんてするわけもない。二人きりのこの空間に立ち込めるのは仄かに香がついた煙だけ。
ありったけの何かを放出させるかのように燃える火は鮮やかな色の変化を繰り返す。

「とうとう明日ね」

ずっと会話が途絶えていたのは多分そのため。明日、というひとつの未知の扉が開かれる日だったから。互いに不安と、共に感じる期待が連鎖反応を齎した。

「サクラちゃんは、どうする?」

立ち上がって少女が手にしていた一本の花火が吹く火をぼんやりと眺めた。わくわくするような。けれども死と隣り合わせの生活が明日、目の前に横たわる。

「何が?」

やがて花火の音が消沈していき闇は導かれるようにやってきた。顔さえも認識できない。彼の気配がした方向をサクラは振り返った。

「もし、サスケと会ったら」

――サクラちゃんはどうする?

さっきの台詞は、コレが頭だったのか。サクラはあともう数本しか残っていない花火を手探りに探した。ナルトらしい質問がなんとも愉快で。

「殴るよ」

答えたのも、偽りではなく真意の気持ち。

「殴る?」

聞き取れなかったわけではない。あまりに意外すぎる言葉だったから、反復しただけ。けれども彼女はは大きく頷いた。

「殴るよ、力いっぱい」

しゃがんだ膝を抱え込む腕に力を込める。蝋燭の弱弱しい光がサクラの横顔を映し出した。たったそれだけの演出に、胸は高鳴ってしまう。

「サクラちゃんに殴られたら、サスケの奴死んじまうってばよ」

苦笑したのは五月蠅い鼓動を誤魔化すためだったのかもしれない。

「じゃあ死なない程度に殴る」

サクラも少し笑った。
意識を、しっかり戻してあげるために。そして私の目的を忘れてしまわないために。あるがままの想いをぶつけてしまいましょう。
サクラの手が最後の花火をつまむように持ち上げた。その線香花火の先端に蝋燭から伝わった火が徐々に火力を上げていく。彼らの未来を、まるでせかすかのように。広範囲で光を分けてくれる線香花火の前にナルトも腰を降ろした。
不意に吹き荒れた突風に蝋燭の火はかき消されてしまったけれど、花火は素知らぬ顔で燃え続けていた。固く結ばれるサクラの唇。決意が、不安が、期待が、この小さな花火に全て混沌している。
あの頃は、命がけで護ってもらった命を賭けて、今度は私が貴方を闇から救って見せます。"孤独"の手から全身全霊で、取り戻して見せます。
少しずつ力をなくした細い花火は、地面から近い先端に大きな火の玉を拵えた。保てたのはほんの数秒。ぽとんと音もなく地面に落ちたのと同時に、ふっと闇が訪れた。ただそれだけ。本当にそれだけのことにすら、何故だろう涙が浮かんだ。ナルトに気付かれぬ前に少女はがむしゃらに両手で頬を伝った滴をぬぐった。下唇をかみ締めて、ぐっと堪える。
その時。サクラの頬に広がったのは思いがけず柔らかい感触。
刹那の時間。触れたのは一度も重ねあったことはない、彼の口唇。震える肩を抱きしめようとする衝動は無理やりに押し込めて。

なぁ、そろそろいい加減隠れんぼは終わりにしよう。姿を現しても、鬼はもう遠の彼方にいってしまったから大丈夫だ。それでももし、お前がいまだに降参しないというのなら。今もなお、お前のことを思い続けて自分に偽っている彼の少女を連れ去ってしまおうか。

END.
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